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病気に苦しむ患者さんに希望をもたらす新しいくすりについてのホットな話題をわかりやすくお伝えします

ファイザーの新型コロナワクチンはどのように開発されたのか?

世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス(COVID-19)。それを撲滅するための切り札がワクチンです。手洗い・マスク・ソーシャルディスタンスで感染の拡大を抑えることは重要です。が、それは感染拡大のスピードを遅らせているだけで、パンデミック終結にはつながりません。もともと、ただ一匹(一粒?)のウイルスが(たぶん中国で)偶然に生じ、それが世界中に広まったわけです。感染抑制だけで最後の一匹がいなくなるまでウイルスを駆逐することは不可能です。世界中の人の多くに新型コロナに対する免疫ができて、ウイルスが感染する先が見つからなくなったときにはじめて、新型コロナははじめて収束したと言えるでしょう。

 

ワクチンのイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

 

現在、実に、約200種類のワクチンが開発中の状態にあると言われています。その中で、ファイザー社のワクチンが、まずイギリスにおいて使用を承認され、一般への接種が2020年の12月8日から始まりました。それに続いてアメリカのFDAからも承認され、アメリカでの接種も進んでいます。現時点(2021年1月3日)までに、既に200万人の人が接種を受けていると報道されています。いよいよ、新型コロナ撲滅に向かって、その一歩が確実に踏み出されたのです。

 

ファイザー社のワクチン(BNT162b2)臨床試験の結果についてのプレスリリースが、2020年11月9日にあり、90%以上の予防効果が認められたというニュースが世界を駆け巡りました。その高い予防効果の数字に、世界が驚くとともに、パンデミックが起こってから初めて希望の光を見た思いをした方も多いでしょう。

 

この臨床試験は、第3相(フェーズ3ともいいます)の臨床試験と呼ばれるもので、本当にその薬が効くのかどうかを最終的に判定するという重要な試験になります。第3相というからには、その前に、第1相、第2相の試験もあるわけです。第1相・2相の臨床試験では、少人数の人に薬が投与されます。第1相では、健康な人にその薬を投与して、安全性が大丈夫そうかどうかを調べ、第2相では少数の患者さんに薬を投与して、効きがありそうかどうかの予備検討をするというのが基本的な位置づけです。

 

それで、安全性も大丈夫そう、効きもありそうということが確かめられた後に、もっとずっとたくさんの人に対して、本当に安全性は大丈夫なのか、本当に効くのか、ということを第3相で調べるわけです。

 

ワクチンが効くかどうかを調べるという試験は、実は、大変です。ワクチンというのは、コロナになってしまった人を治すのではなく、コロナにかからなくなる、ということが、その「効き目」=「薬効」になるわけです。よって、ワクチンを注射した後に、コロナにかかる人が減ったということを、ワクチンを注射しなかった場合と比較して示さなければいけません。全世界的にコロナが大流行していて、毎日、たくさんの人が感染していると言っても、それは全体的に見た場合の話です。臨床試験に参加した特定の人たちが、たちまちたくさん感染するか、というと、実はそうではありません。ですので、統計的に意味のある数の感染者数が臨床試験の中で観察されるようにするには、何万人もの人を対象にして試験を行う必要があります。

 

最終的な結果のまとめの論文が「The New England Journal of Medicine」という権威のある医学雑誌に発表されていますので、実際はどうだったのかを見ていきましょう。

 

試験には約4万人の人が参加しました。その人たちを、性別、年齢、人種などがだいたい同じになるように二つのグループに分けます。そして、21,720人にはワクチンを、別の21,728人にはワクチンを含まない同じような液体が注射されました。この薬の成分が入っていないものを、プラセボ(偽薬)と呼びます。注射された人(被験者)には、自分がワクチンを投与されたのか、プラセボを投与されたのかがわかりません。これをブラインドテスト・盲験と呼びます。こうすることで、気のせいで効いてしまう(プラセボ効果)が防げるのです。もっとも、ワクチンの場合には気のせいで効いたり効かなかったりはありませんが、自分がどちらを投与されているかをしることで、その後の行動に差が出るかもしれません。ワクチンを投与されたことで、より無防備に飲み会に行ってしまうとか、そういうことです。

 

この1回目の注射の後、21日間あけて2回目の投与がなされました。その後、観察を続けたところ、両グループあわせて合計で170人の感染者が出ました。そのうち、162人はプラセボを投与したグループから発生しており、一方、ワクチンを投与したグループからは8人しか感染者がでませんでした。あきらかにワクチンが感染を防いでおり、またその有効率は95%だと計算されたという結果です。

 

11月に行われたプレスリリースは、試験の中間発表であり、両グループ合わせて94人の感染者が出た時点での結果が速報として発表されました。その時点で、ワクチングループから8人、プラセボグループから86人の感染者が出たと言われていました。その後、観察期間を延ばすことによって、プラセボグループの感染者はおおよそ倍に増えましたが、ワクチングループの感染者はまったく増えなかったことになります。

 

「でも、ワクチンを打っても8人も感染してしまうのなら大したことないんじゃないの??」と思われるかもしれません。しかし、ワクチンの予防効果の強さとしては、これは悪い数字ではなく、逆に非常に良い方だと考えられています。世界保健機構(WHO)からは、最低50%の予防効果があればワクチンとして認められるという見解が出ているのです。また、上述したように、観察期間を延ばしてから感染者が増えなかったということは、この8人の感染者は、まだ十分に免疫ができきっていなかったから感染してしまった可能性も考えられます。いずれにしろ、感染の予防効果があることは間違いないと結論づけられます。

 

気になる安全性の方ですが、こちらも、素晴らしいことに、シリアスな毒性は、少なくともこの試験内においては見られなかった、ということが論文に報告されています。投与後の数日間に、注射をした個所の痛み、疲労、頭痛といった症状が、ワクチン投与グループの人たちに見られました。しかしそれは軽度から中程度の毒性と判断されています。ワクチンを投与したためと考えられる重篤な毒性は見られなかったという結論です。

 

この良好な結果をもとにファイザーのワクチンは承認され、今やアメリカ、イギリスをはじめ、各国で一般の人への接種が行われています。バイデン次期大統領をはじめとする著名人が率先して接種を受けることで、一般の人への浸透を加速化させようという動きも出てきています。日本にもファイザーから申請がなされており、現在、審査中です。早ければ2021年の2月下旬には投与が開始できるかという報道もなされていますが、できればもっと前倒しできないものかと思います。先の臨床試験にもアジア人がワクチングループで800人ほど入っており、アジア人における安全性についての基本的なデータはあるとも言えるでしょう。ウイルスの変異体の出現が話題になっていますが、それを抑えるためにも、できるだけ早期でのワクチンでの抑え込みが必要ではないかと思われます。

 

いずれにしろ、人類はついに、この未曽有の世界規模での大災害を封じ込める武器を手にしたのです。それをどれだけうまく使いこなし、できるだけ早く災害を抑え込むかは、人間がどれだけ賢く行動できるかにかかっています。我々がどれだけ賢い者なのかを、新型コロナウイルスは、じっと見守っていることでしょう。

 

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もう一つのすごいADC(抗体ドラッグ複合体医薬):トロデルヴィ

前回の記事でご紹介したエンハーツとともに、もう一つ、すごいADC(Antibody Drug Conjugate、抗体ドラッグ複合体医薬)があると思っています。
それは、トロデルヴィ(Trodelvy)と呼ばれるADCです。

 

・・・というと語弊があるかもしれません。
他にも承認されたADCがいくつもあり、それらは優れた薬効があるからこそ、承認されて治療に使われているわけです。
それらの中で、なぜトロデルヴィを特別に取り上げるかというと、まず第一に、これが固形がんに対するADCだからです。

 

血液中の細胞が異常に増えてしまうがんを血液がんと言います。
白血球が増えてしまう白血病、リンパ球が増えてしまうリンパ腫などがそれです。
一方、血液ではない、固形の臓器・組織の一部が異常に増殖してしまうがんのことを固形がんと言います。
肺がん、大腸がん、乳がん胃がん、肝臓がんなどが固形がんであり、がんの80%以上が固形がんです。
死因となるがんの種類としても、その上位は固形がんが占めます。

 

世界で最初に承認されたADCであるマイロターグは白血病急性骨髄性白血病)を治療する薬でした。
その後に開発されたADCも、その多くは、実は血液がんを治療するためのADCだったのです。
一般的に、血液がんの方がADCが効きやすい、と考えられています。
血液がんは血中に存在するものなので、血中に注射したADCがすぐに届くということが、その理由かもしれません。
固形がんの場合は、ADCが、血流からがん組織の中に入り込んでいく必要があるので、がん組織の中にまでなかなか十分な薬物の濃度に達しないということがあるのかもしれません。

 

固形がんに対するADCは、乳がんの治療薬であるカドサイラしかありませんでした。
2019年にエンハーツが承認されましたが、これも実はカドサイラと同じHER2陽性乳がんに対する薬だったのです。

 

「HER2陽性」とはなんでしょう?
HER2とは、細胞が増えるためのシグナルを受け取るアンテナの役割をするタンパク質の名前です。
細胞の表面に突き刺さって存在していて、細胞の外から来る「増えろ」というシグナル(これもまたタンパク質)をキャッチして、細胞の中にそれを伝えます。
これは別にがん細胞のためにあるタンパク質ではなく、正常の細胞が、正常に増えるために必要な部品なのです。
しかし、がん細胞では、HER2の機能が過剰になっており、そのためにがん細胞が異常に増殖してしまいます。
体が成長して大人になってしまってからは、ほとんどの細胞はもうそれほど増える必要はありませんので、HER2の量は正常な細胞ではすごく少なくなっています。
ただ、ある種のがん細胞ではHER2の量が多くなってしまっており、そのために異常に増殖してしまうのです。
この種類のがんは乳がんに多く、HER2が多くあることが特徴なので、HER2陽性乳がんとグループ分けして呼ばれているわけです。

 

カドサイラとエンハーツはともに、このHER2というがん細胞の表面に出ているタンパク質に結合する抗体を使ったADCでした。
HER2は正常の組織にはあまり出ていないので、これらのADCはがん細胞により選択的に結合してがん細胞を殺すドラッグを送り届けることができるわけです。

ただし、HER2が多く出ているのは、主には乳がんであり、また乳がんにおいても部分的であり、乳がん全体の15~20%と言われています。

同じ乳がんでも、HER2を出していない乳がんが多くあるわけです。
これらのがんに対しては、HER2に結合するように作られたカドサイラやエンハーツは、結合することができず、効きません。


HER2以外にもがん細胞に多く存在していて、正常な組織にはあまり存在しないタンパク質があります。
その一つがTrop-2と呼ばれるタンパク質です。
Trop-2も細胞が増えるのに必要な役割を果たしていると考えられていて、がん細胞ではその量が多く、正常組織では少ないのです。
Trop-2の良いところは、多くの種類のがんに存在していることです。
乳がんもそうですが、それ以外に、肺がん、尿路上皮がんなどにおいて、Trop-2が多く出ていることが知られています。
さらに重要なのは、HER2が出ていないトリプルネガティブ乳がん(TNBCと呼ばれます)というタイプの乳がんでTrop-2が出ているということです。
カドサイラやエンハーツでは治療できないTNBCタイプ乳がんを、Trop-2に結合するADCでは治療することができるのです。
TNBCタイプは乳がんの約15~20%を占めているものですが、乳がんの中でも特に悪性度が高いと考えられているため、このタイプに効く薬が長らく求めらていました。
そして、トロデルヴィがまさにそのTrop-2に結合するADCなのです。

 

この薬は、イムノメディックス(Immunomedics)というアメリカの会社(ADCを得意とする会社です)が開発しました。
転移性のTNBCタイプ乳がんの治療薬として、2020年の4月にアメリFDAに承認されました。
それも、ブレークスルーセラピー(画期的な治療薬)指定という、特に画期的な新薬に贈られる名誉のある称号をFDAから与えられての承認でした。
複数の治療を受けたにも関わらず、それらが効かなくなってしまい、もう治療法がなくなってしまった状態のTNBCタイプ乳がんに対して全生存率を大幅に改善する効果が第3相試験(ASCENT試験)で示されています。
トロデルヴィはさらに、TNBCタイプではないHER2陰性の乳がん(HR陽性/HER2陰性乳がん)についても第3相臨床試験を進めています。
このタイプは、乳がん全体の70%以上を占めるものなので、そこでも同様の有効性が示されると、乳がんの治療に大きな革新をもたらすことになります。
それに加え、肺がん、膀胱がん、前立腺がんにういても臨床試験が進行中です。
これらのがんにおいてもTrop-2が出ていることから、乳がんと同じように効く可能性があります。

 

このように、HER2が出ていない様々ながんにもTrop-2は出ていることがトロデルヴィの優れたところです。
そのことは良く知られているので、実は第一三共もTrop-2に対する独自のADCの開発を進めています。
DS-1062というコードネームで呼ばれているものがそれです。
こちらは、リンカーやドラッグがトロデルヴィとは異なっており、より高い安全性が期待できると考えられています。
同じTrop-2に対するADCという薬剤クラスの中で最も優れたもの、ベストインクラス(Best in Class/BiC)を目指すということで第一三共はこちらの開発も加速させているようです。
より改良されたADCが出てくれば、それだけ治療の成績が上がり、患者さんの利益となります。
ADCというがんに対するアプローチが有望だということが明らかになるにつれ、さらに改良されたADCが次々と開発されようとしているわけです。
希望が広がります。

エンハーツ(第一三共)の快進撃!:Antibody Drug Conjugate(ADC)

エンハーツとは、第一三共が開発した抗体ドラッグ複合体医薬Antibody Drug Conjygate/ADC)です。
英語名はENHERTS、開発コードのDS-8201で呼ばれることもあります。
今、がん治療薬の世界で注目を浴びている薬の筆頭とも言えるでしょう。

 

その臨床開発のスピードの早さが、エンハーツがいかに画期的な薬であったかを物語っています。
アメリFDAがエンハーツを承認したのは、昨年、2019年12月20日ですが、なんと、申請を受理してから2か月という異例の速さで承認に至っています。
もともと半年かかる予定だったのを、大幅に前倒しての迅速な承認プロセスでした。
また、この承認申請は、臨床試験の第2相のデータに基づいて行われています。

 

本来、第2相は、小規模の人数の患者さん(がんの場合、通常、数10人程度)において、薬効の兆しがあるかどうか、どのくらいの量を投与するとそれが見られそうか、ということを調べる、いわば、予備的な試験という位置づけです。
その結果を踏まえて、より多くの患者さん(がんの場合、通常、数100人程度)で、本当に求める薬効が見られるかどうかを、最終的に判断します。
第2相のデータで承認されたということは、第3相の試験をやらなくても、たぶん効くことは間違いない、と規制当局に認められたということです。
第3相試験をやるよりも、早く一般の患者さんに使えるようにした方が、患者さんのメリットになると判断されたということになります。

これは、薬の開発をするものにとって、最大級の賞賛であるともいえます。
ただし、この見立てが本当にあっているかをしっかりと検証することは重要なので、今後、一般の臨床で使われる中で、本当に効いていたか、安全性は問題なかったかということを、後々報告するということがその承認の条件にはなっています。

 

エンハーツを使うことが認められたのは、「2つ以上の抗HER2療法を受けたHER2陽性の手術不能または転移性乳がん」です。
これはどういうことかというと、まず、がんの種類としては、乳がんということになります。
それも転移性の乳がんであり、手術ができないものに限るということです。
まだ転移していない早期のがんで、がん組織が原発巣という、もともとがんが発生した一つの部位に限局している場合は、手術でそれを取ってしまうことがもっとも有効なので、この薬は使いません。
そういう早期のがんは、完全に治る可能性も高いですし、危険性は少ないと言えます。
問題なのは、体のあちこちに転移してしまって、手術では全部をとることができない(手術の体へのダメージが大きすぎるから)がんの場合です。
そういうケースでは、抗がん剤による治療が中心となります。
抗がん剤による治療においては、最初にどの薬を使うのか、どういう順番で薬を使っていくのか、ということが、ガイドラインとして決まっています。
それぞれのがんを専門に治療・研究する学会がそのガイドラインを決めます。
最初はある薬を投与して効きを見て、それで治療できる限りはその薬を使い続けます。
しかし、ときには、その薬では効かない、あるいは最初は効いていたけれども、そのうちに効かなくなってくるということがあります。
その場合は、2番手の薬としてこの薬を使うように、ということが定められています。
その2番手の薬は、1番手の薬が効かない患者において効果を示す、ということが臨床試験んで確かめられており、だからその薬を使うように、という指示になるわけです。

 

エンハーツの場合は、2つ以上の抗がん剤を使っても効かなかった・効かないようになってしまった患者に使うように、という承認になります。
通常、このようながんに対しては、もう打つ手がない、という状況になってしまいます。
手術もできない、2つの抗がん剤も効かない、という状態なわけです。
そのような患者に対して、エンハーツは効くであろうということです。
まさに希望の薬です。

 

では、臨床試験ではどのような結果だったのでしょう?

承認データのもととなった第2相の臨床試験では、184人の患者さんに対しての効果が調べられました。
その結果、そのうちの112人(60.9%)でがんの大きさが30%以上小さくなるという反応がみられ、さらにそのうちの11人では、なんと、完全にがんが消滅するという作用が見られました。
これらの患者さんは、エンハーツの治療を受けるまでに、平均して6種類もの治療を受けています。

それらの治療がまったく効かなかった患者さんに対して、この作用が見られたということですから、エンハーツの薬効がいかにすごいかがわかります。

 

一方、毒性に関しては、全体の13.6%に間質性肺疾患(ILD)と呼ばれる副作用が見られたものの、10.9%はほとんど症状が無いか軽い症状だったということです。
あるシンポジウムでこの結果について発表を行ったDana-Farberがん研究所のIan Krop医師は、「この治療の可能性に興奮している」と語ったそうです。

 

日本でも、同じデータをもとにして承認がなされ、2020年3月に優先審査によって承認されています。


エンハーツがこのような画期的な薬効を出したのは、先の記事に書いたようなADCの技術的な改善が実を結んだからと言えるでしょう。
具体的には、リンカー部分の安定性の改善であり、またドラッグがより選択的にがんを殺すものになっていることも大きいと思います。
エンハーツのドラッグ部分は、もともと第一三共の前身の第一製薬において、ADCではない、普通の抗がん剤として開発が進められていたものを改良して使われています。
もとの薬の開発は途中で頓挫してしまいましたが、ADCとして生まれ変わり、抗体によってよりがんの選択性を増すことで、その威力が発揮できるようになったものと考えられます。

 

また、より強くがん細胞を殺すために、エンハーツの場合は、一つの抗体に8個のドラッグが付いています。

この点はエンハーツの特徴です。

他社が開発するADCはだいたいが3つ程度であるのに比べて、一つの抗体でより多くのドラッグをがん細胞に運ぶことができ、より確実にがん細胞を殺すことができると考えられます。
これは第一三共の独自の技術で、これまでのADCの限界を打ち破る一つの技術革新であると思います。

 

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左:通常のADC、実際にはドラッグは一つの抗体当たり3~5個ついていることが多い

右:エンハーツ、一つの抗体につき8個のドラッグがついている


このように高度に改善されたADCを、日本の製薬企業が作り上げ、世界中の患者さんの希望の薬として開発したということは、本当に素晴らしいことです。

エンハーツは、現在、乳がん以外にも、胃がん、大腸がん、非小細胞肺がんに対しても臨床試験が行われており、その結果が注目されます。

抗体ドラッグ複合体(ADC)医薬、ついに花開いたか!

ここ数年、抗体ドラッグ複合体医薬の開発が活性化しています。


抗体ドラッグ複合体は、英語で言うと、Antibody Drug Conjugate

ADCと略されることが多いので、ここでもADCでいきます。

ADCというのは、特定の薬の名前ではなく、薬の種類のことです。
下の図のように、抗体(青いY字の部分)低分子の薬(オレンジ)リンカー(緑)でつながったもののことをADCと呼びます。
抗体とドラッグ(低分子医薬)が複合体になっているということですね。

 

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ADCは、がんの治療薬であることがほとんどです。
抗体の部分は、がん細胞の細胞表面に存在するタンパク質、これを抗原と呼びます、にくっつきます。
そうすると、ADCはがん細胞に取り込まれて、細胞の中に入っていきます。
そこでリンカー部分が切れて、ドラッグが細胞の中で放出され、がん細胞を殺します。
一方、がん細胞ではない正常の細胞(正常の組織)にはこの抗原がないので、ADCがくっつきません。
この理屈で、がん細胞だけを殺して、正常の組織には悪影響を与えない、というのがADCの作用メカニズムになります。

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左のがん細胞(ピンク色)では、ADC薬が細胞に結合して中に取り込まれる。

がん細胞の中でリンカーが切れてドラッグが放出される。

右の正常の細胞(青色)にはADC薬が結合しない。


と聞くと、「なんと素晴らしい薬ではないか!」とお思いになる方も多いでしょう。

しかし現実は、残念ながら、なかなかそう単純にはいきません。

 

ADCというコンセプトは、実はかなり昔、1980年代くらいから既に存在しています。

これまでに、数々のADCの薬の開発が試みられました。
しかしそのほとんどが失敗してしまいます。
そうした中、しっかりと規制当局に承認された最初のものがマイロターグという薬です。
ファイザー社とワイス社が共同開発し、2001年にアメリFDA承認されました。
これは、急性骨髄性白血病(Acute Myelogenous Leukemia、AML)という、血液のがん、白血病に対するADCです。
しかしその後、実際の臨床現場で使われるうちに、毒性が強いことがわかってきて、結局、2010年には市場から撤退するということになってしまいました。

 

なぜ、ADCはがん細胞だけを殺すことができるはずなのに、実際には毒性が出てしまうのでしょうか?
マイロターグは、あくまでも、がん細胞にしか結合せず、肝臓や心臓や腎臓といった、正常の組織にはくっつきません。
それなのに、そういった正常の組織に毒性が出てしまうのは、なぜでしょう?

 

それは、抗体の部分から外れてしまったドラッグが血中を漂い、正常組織を痛めつけてしまうためなのです。
この低分子ドラッグには、がん細胞だけを選択的に殺すような性質はありません。
がん細胞であろうが、正常細胞であろうが、殺してしまうのです。
抗体にくっついたままであれば、がん細胞に取り込まれて、がん細胞でだけ働くことができるのですが、抗体から外れてしまうと、もう無差別に細胞という細胞を痛めつけることになります。

 

ここに問題があることは明らかだったので、研究者たちは、この部分の改良に取り組みました。
体内で簡単にドラッグが外れず、がん細胞に入り込んだときのみに外れるようなリンカーの開発に努力を傾けたのです。
それに加え、がん細胞を殺すドラッグの方にも改良が加えられました。
まったく無差別にがん細胞も正常細胞も殺すのではなく、よりがん細胞だけにダメージが大きい(がん選択制が高い)ドラッグの開発が進みました。

 

こうした改良が地道ながらも進められ、徐々にADCは、そのコンセプト通りに働く薬剤へと進化してきました。
その成果が現れ始め、ここ数年の開発成功ラッシュにつながっていると言えるでしょう。


2001年承認のマイロターグ以降、2013年までは、アドセトリス(ホジキンリンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫)、カドサイラ(乳がん)の2剤しか、承認されたADC薬はありませんでした。
それが、2017年以降は、ベスポンサ(急性リンパ性白血病)、ポリヴィ(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、エンハーツ(乳がん)、パドセヴ(尿路上皮がん)、トロデルヴィ(乳がん)、ブレンレプ(多発性骨髄腫)の6剤が立て続けに承認されました。
さらに多数の有望そうなものが臨床試験中です。

 

まさにブームが到来といった感があります。
長い間の下積み期間で磨きをかけてきたADCが、ついにここで花開き、本来の高いポテンシャルを発揮できるようになってきていると見ることができます。
がん治療における中心的な存在になっていく可能性があります。


その中の一つに、日本の第一三共が開発したエンハーツという薬があります。
これは、転移性の乳がんに対するADC薬で、アメリカで昨年末、日本で今年の3月に承認されました。
次回はこの薬についてハイライトしてみたいと思っています。

トランプが使った薬と使わなかった薬:使わなかった薬

さて、前編では、トランプ大統領の治療に使われた3つの薬を取り上げました。 

 

drkaito.hatenablog.com

 

これらの3つの薬が使われたと大々的に報道されている一方、これまで、新型コロナ治療薬の希望の星と持ち上げられていたのに、使われたとは報道されていない薬があります。
それを持ち上げていたのは、とりもなおさず、トランプ大統領自身であったにも関わらず、です。

 

そのまず一つ目は、ヒドロキシクロロキン(クロロキン)です。
7月ころには、トランプ大統領は、この薬の大サポーターであり、ことあるごとにこの薬を持ち上げ、すぐに承認するべきだと言っていました。
もともとクロロキンは、マラリアを治療する薬として開発されたものであり、実際に臨床で広く使われています。
しかし、新型コロナウイルスに対する治療効果については、複数の臨床試験の結果から、有効性がないとして、FDAはその緊急使用を撤回していました。
医師や科学者からなる専門家集団が、効果なしと判断したものですが、しかし、トランプ大統領は、これを、効くに違いないとする我が信念にしたがって、自ら予防的に服用していたと語っていたというから驚きです。
しかし、今回の感染後の治療において、この薬が活躍したという報道は見当たりません。

 

そしてもう一つが、新型コロナに感染して、それから回復した患者さんから採取した血漿を用いた療法です。
こちらは8月頃にさかんにトランプ大統領が宣伝していました。
新型コロナに感染し、回復した患者さんの血液の中には、新型コロナウイルスに対する抗体が含まれています。
これは、ウイルスと戦うために、体が自ら作り出した、いわば自作の薬です。
感染から回復したということは、この「薬」が効いたという証でもあります。
回復後も、このウイルス抗体は体の中に残り続けますので、これをいただいてきて、別の人の治療に使おうという作戦です。

 

血液を遠心分離すると出てくる上澄みの液、血漿と呼ばれる成分に、ウイルス抗体が含まれています。
これをさらに様々な方法で精製して薬として使います。
しかし、問題があります。
患者さんの体でできるウイルス抗体というのは一種類ではなく、実は人により千差万別なのです。
そもそも、体の中にある「抗体」という成分は、一種類の物質のことを指すのではなく、ちょっとずつ性質の異なるものが何百万と混ざったものなのです。
その中には、新型コロナウイルスに対して、ものすごくよく効くものもあれば、そうでもないものも、また全然効かないものも混ざっており、さらに言うと、どちらかというと悪い作用を持つものさえも入っている可能性すらあります。
そういう、違った性質のたくさんの種類のウイルス抗体が混ざって血漿に存在しているのです。
そのトータルの結果として、ウイルスを撃退する作用の方が上回っていた結果、患者さんは回復してきたと言えます。
ただし、患者さんによって、それぞれが持っている抗体の種類は違っており、またその量もまちまちです。
ですので、それを薬として用いる際に、一定の品質のものを安定して作り続けるということが難しいのです。
難しいというか、不可能です。
試験管内の模擬試験で、一定以上の抗ウイルス作用を持つ、という品質検定試験をして、それに合格したものを薬として用いるということはします。
ある一定以上の効果が(ある程度は)保証されていますが、ただ、すべてのロットが全く均一ということはあり得ません。
基本的に、どういう種類の抗体がどれだけ入っているかは全然わからないまま、トータルとして、ある程度のウイルス撃退活性を持つからOKだろうとしているだけ、ということになります。

 

新型コロナの感染が爆発的に広まるにつれ、同時に、感染から回復した患者さんの数も爆発的に増えました。
そういう人たちがすぐそこにたくさんおり、その患者さんは、体内で自然にできた「薬」を持っているわけだから、それを使えばいいじゃないか、というのは、自然な発想だと思います。
実際、この回復患者血漿を抗ウイルス薬として使うというアイデアは、別に、新型コロナで新たに出てきたものではなく、昔から別のウイルスでやられていた方法ではあります。
しかし、ここまで大々的に使われようとされたことはなく、初めての試みでした。

 

新型コロナに対する有効な治療薬がまったく見当たらなかった頃は、この患者血漿からとった抗体というものに、熱い期待が寄せられました。
それを開発する企業もいくつか現れました。
日本でも武田薬品が開発を進めています。

 

しかし、そこに、「モノクローナル抗体」を医薬品として開発する、という流れが追い付いてきたのです。
リジェネロン社のREGN-COV2はその一つであり、他にも、イーライリリー社をはじめ、たくさんの会社が似たようなモノクローナル抗体の開発を進めています。

 

先ほど、患者さんの血液の中には無数のウイルス抗体があると言いましたが、モノクローナル抗体とは、簡単に言うと、そのうちの、一つの種類だけを取り出して増やしたものです。
患者さんの体内にある抗体を取り出すこともありますし、別の方法(動物にウイルスを免疫するとか、ライブラリー法という方法を使ったりとか)で作ることもあります。
ポイントは、ある一種類の性質を持つ単一の抗体であるということです。

 

それのどこが良いかというと、体内にある雑多な抗体の中から、最も有効だと思われる種類の抗体だけを選んでこれる、という点です。
良い抗体だけを選んでいるわけですから、どうでもいいようなものがたくさん混じっている血漿抗体に比べて、より強く効く可能性があります。

 

その一種類の抗体だけを、遺伝子組み換え法、より平たく言うと、バイオテクノロジーによって、大量に生産することが可能です。
そうすると、機能的にも、品質的にも均一のものを、ずっと安定して生産することができるのです。
医薬品がどれを使っても同じ品質であることは重要ですから、これは非常に大きい利点です。

 

どういう考えが、トランプ医師団の頭にあったのかはわかりませんが、結局、あれだけトランプ大統領が「推し」ていた血漿抗体は、皮肉にも、自分自身の治療には使われなかったようです。

トランプが使った薬と使わなかった薬:使った薬

トランプ(現)大統領が新型コロナウイルスに感染したというのは、なんとも、今のアメリカを象徴する出来事でした。

 

世界最大のパンデミックが起こっている国で、それを招いた元凶の一人とも揶揄される、そのリーダーが病に倒れたわけです。
マスクなんてしなくても良いと主張していた張本人でもあります。
そして、そのタイミングがまた大統領選の真っ最中でした。
史上最高の大接戦と言われる、その戦いがまさに最高潮のタイミングで感染してしまうというのも、ちょっと暗示的な気もします。

 

ヘリコプターで軍の医療センターに緊急入院した大統領でしたが、なんと、3日いただけで、すぐに大統領選に復帰してきました。
もちろん、無理をした面もあるのでしょうが、その治療がバッチリと著効したということもあると思います。
なにせ、超大国アメリカのドンであり、また大富豪でもある人です。
その人の治療には、世界の最先端の医療を誇るアメリカの、最高の医療が施されたと見てまちがいありません。

 

ではトランプ大統領はどういう治療を受けたのでしょう?

 

トランプ大統領には、コロナ治療において重要な、次の3つの薬が投与されたと報道されています。

 

その一つ目は、デキサメタゾンです。
これは、免疫を抑える薬で、他の病気にも広く使われています。
もう数十年も前から使われている薬で、炎症を抑えることがよく知られています。
新型コロナによる肺炎にも効くのではないかということで臨床試験が行われ、実際に効くということが示されました。
この薬は、今や新型コロナ治療のスタンダードとして使われています。
値段も安く、日本では、1日あたり100円もかからないというものです。
この薬は、酸素吸入が必要な患者に対して有効である、と認められているものなので、逆に言うと、トランプ大統領は、酸素吸入が必要なほど厳しい状態にあったと考えられます。

 

そしてもう一つが、一時期、すごく話題になっていたレムデシビルです。
これは、ウイルスに直接、働きかけ、ウイルスが体の中で増えないようにするという薬です。
アメリカのギリアド・サイエンシズ社が、もともとはエボラウイルスなどの別のウイルス感染に対する薬として開発しました。
それが新型コロナウイルスにも効くのではないかということが示されてきて、5月にFDAから緊急使用許可が与えられ、その後、10月に正式に承認されています。
日本でも、このFDAの緊急使用許可の判断を受けて、特例承認で使えるようになっています。
日本でちゃんと臨床試験をやっていないけど、アメリカのFDAが効くと言っているし、パンデミックで切羽詰まった状態なので、特例で使えるようにしてしまおう、ということです。

 

一時期、希望の薬として、大々的に報道されたレムデシビルですが、その後、広く使われるようになってきて、その効果は限定的である、ということがわかりつつあるようです。
11月20日に、世界保健機構(WHO)が、症状の重い軽いにかかわらず、レムデシビルを新型コロナ患者には使わないように、という勧告を出しています。
「致死率などの改善効果は実証されていない一方、副作用の可能性や医療現場の負担の問題があるため」とのことです。
あれほど希望の光として持ち上げられたものが、一転して、ひどい言われようです。
ただ、実際、WHOが主導した国際的な臨床試験で、レムデシビルには、入院患者への効果が「ほとんどないか、全くなかった」という結果が出てしまっています。
「医療現場の負担の問題」とは、これが患者さんが簡単に飲める飲み薬ではなくて、医者により点滴しなければいけない薬であるために起こります。
治療の間はずっと病院のベッドを使うことになり、また、それが一回で済むのではなく、何日にも(最大10日)わたって治療を行わなければならないことから、病院への負担が大きいというわけです。
それでも劇的に効くのであれば、もちろん、「負担が、、、」などと言われずに、使われるでしょう。
しかし、効くかどうかが疑わしいうえに、副作用もありうるということで、この勧告になっていると思われます。

 

さて、トランプ大統領の話に戻りましょう。

 

トランプ大統領に投与された第3の薬は、新型コロナウイルスに対する抗体医薬、REGN-COV2です。
アメリカのリジェネロン社が開発しました。
この薬には、新型コロナウイルスにくっつく性質を持つ抗体(モノクローナル抗体)が、2種類、入っています。
この2つの抗体は、新型コロナウイルスSタンパク(スパイクタンパク)のちょっとずつ違ったところにくっつきます。
Sタンパクとは、新型コロナウイルスの本体の丸い部分から無数に飛び出した突起の部分で、ここがウイルスに感染するのに必要だとわかっています。
抗体はこの部分にくっつくことで、ウイルスが細胞に感染することを防ぎます。
2つの違う種類の抗体が混合されているのは、将来的にウイルスが変異していくことに備えるためです。
片方ずつの抗体でも、ウイルスの感染をブロックする力はあるのですが、あえて2つを混ぜて(カクテル抗体と言います)います。
ウイルスはどんどん変異していき、そのうちには抗体がくっつかなるような変異も出てくる可能性があります。
そのとき、2つの抗体を混ぜておけば、そのどちらにもくっつかなくなる変異がいきなりできる確率はすごく低いので、どちらかが働いて、感染を防ぐようになるだろうという考えです。
これは、非常に的を得ているやり口だと思います。

 

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新型コロナウイルスに結合するREGN-COV2の2つのモノクローナル抗体(緑と黄緑) 突起部分にあるSタンパク状の、ちょっとだけ違う場所に結合して、ウイルスが細胞に感染するのを防ぎます。

 

REGN-COV2がトランプ大統領に投与された時点で、この薬については、臨床での使用の承認が出ていませんでした。
ただ、臨床試験では患者への投与が行われており、275人に注射した結果、体の中のウイルスの量が減る、ということが示されていました。
この結果を受けて、「おそらく効く」と、トランプ大統領の医療団は判断したのでしょう。
未承認薬の人道的使用を認めるコンパッショネート使用、というやり方で、トランプ大統領への使用が許可されたとのことです。
「人道的使用」などと言い出したら、どんな薬でも患者を救うことを目的としているわけなので、すべてが当てはまってしまうように思いますが、結局、強力なパワーがそこに働いたということではないのでしょうか?

 

それにしてもすごいのは、数百人の患者には臨床試験で使われていたとはいえ、まだまだ未知な部分がある薬を、いきなりアメリカの大統領に使ってしまうという、その判断です。
勇気というかなんというか。
製薬会社としては、うまくいけばその薬の開発の何よりも追い風になり、宣伝にもなりますが、もしも不測の事態が起こってしまえば、致命的なことになりかねません。
アメリカの大統領であり、大統領選の真っ最中であり、そしてあのトランプ氏なのです。

 

結果的に、その判断は吉と出たようです。
それも大吉です。
実際には、REGN-COV2が本当に効いたのか、あるいは別の2つの薬のどちらかが効いたのか、それともどれもが効いていたのか、それはわかりません。
何はともあれ、トランプ大統領は危機的な状況を脱し、わずか3日で退院したのです。
まだウイルスが残っているかもしれないのに、そんなに早く退院するなんて不謹慎すぎると、その際にはさんざん批判されました。
しかし、結局はその後の経過は順調で、今では連日ゴルフを楽しんでいると(それも批判的にですが)報道されています。
ただ、大統領選の結果は、ご存じのとおりとなりました。
もし新型コロナになっていなかったらどうなっていたか、、、それは誰にもわかりません。

 

次号、使わなかった薬に続く